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黒塗りの言葉2 ito pin ページ2

『先輩、なんで』

私の手を握っている彼は
仮面をつけててもわかるぐらい元気がなくて



pin「…盗み聞きしてごめん、でもいつもと様子が違って心配で」


pin「後を追っかけてみたら縁に立ってるし、不穏なこと言ってるし、なんだか」




pin「なんだか、消えちゃいそうで」





1つ1つ話してくれる声は
いつもの元気な声とは正反対で
私を包み込んでいる手も震えている



pin「俺はAの事、何も知らないけど」


pin「でも、誰だって希望は持っていいんだ」



抱きしめる力が弱くなり
彼が私から離れる



pin「嫌いな俺には無理だろうけど、さぶ郎とかなずぴとか他の誰にでもいいから相談して」




pin「それで…希望を、持って生きて欲しい」



離れても手は握ったままで
そう伝えられた



嗚呼、もう駄目だ



どれだけ真っ黒に塗りつぶしても
彼の風で吹き飛ばされてしまって
その下の感情を露わにされてしまう



彼はまさしく、黄金の風だ



彼が言ってくれたんだ
希望を持っていいって
生きてくれって


押し付けがましいだろうし
迷惑かもしれないけど



私が生きたいと思った、責任を



『…先輩、その言葉本当ですね?』


pin「うん、嘘偽りないよ」



取ってもらおう


嘘じゃないと言ってくれた彼を信じて私のことを話す



もう先が長くないこと

この街には新しいことをやりたくて来たこと



そして



『ぺいん先輩の事、本当は大好きです』



私の気持ちを


伝えられた彼はぽかんとしていて
何を言われたかわからない様子だった

けれど理解した瞬間



pin「うぇッ、はぁ!?」



ニコニコ笑顔の仮面から出ている耳は真っ赤に染まって
ひどく動揺していた

私はそんな彼の様子に思わず笑ってしまう
でも、こんなに楽しく笑えたのは久しぶりだ



pin「それじゃあ、俺たち両思いってことでいいんだよね…?」



その言葉に私は頷く
このわずかな時間でさえ心地いいと感じたんだ
こんな時間が私が死ぬまでの間ずっと続くんだと思うとそれすら楽しみになる



 

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作者名:泡沫 | 作成日時:2024年4月18日 8時

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